日本の食品自給率が低いという話はよく耳にしますが、《日本のお魚事情》はどうでしょうか? 日本人といえば「お寿司」「お魚料理」「海産物」というイメージが強いと思いますが… 今回は「漁業と水産流通」について考えてみます。
まず、日本の漁業生産量は1984年をピークに7割も減少しているそうです。 これはかなり深刻で、輸入が増え、海外との競争に負けている影響も強いようです。 日本の漁業も他の食品と同様に危機的状況にあるというのが現状です。
日本の漁業発展のプロセスをひも解くと、「卸売市場」が中心でした。 多様な魚が水揚げされ、卸売市場に持ち込まれるとすぐに販売される仕組みでしたが、近年は「市場外流通」が拡大し、卸売市場の役割が薄れています。 漁業は自然の影響を受けやすく、漁獲量や魚種構成が日々変動し、魚の鮮度は農産物より早く落ちるため、水揚げ後すぐに販売するのが基本です。 市場流通はこの特性に合わせ、需要先に迅速に流通させる仕組みとしてこれまで機能してきました。
具体的には、全国の主要漁港には「産地市場」があり、水揚げされた魚が卸業者に販売委託され、競りで仲買人に販売されます。 仲買人は魚を発泡スチロール箱に詰め、「消費地市場」へトラックで輸送します。 消費地市場では、競りや入札で小売業者や外食業者に販売されます。 つまり、産地市場と消費地市場の2段階の卸売市場が、日本の漁業者と消費者をつないでいます。 この形態は、他の青果や花、肉の市場流通とは異なるわけです。
卸売市場は多様な産地から生鮮品を集荷し、需給バランスを考慮して短時間で大量の生鮮品を販売します。 生産者が自ら営業活動を行うと、短時間で終えられず、代金回収リスクが生じます。 また、高価格で売れてもコスト割れの可能性が大。 さらには小売業者や外食事業者が直接集荷すると時間がかかり、仕入れコストが高くなります。 市場流通は多段階ですが、流通の量や時間、コスト、リスクを考えると、実は市場流通が最も効率的な場合が多いのです。
卸売市場の役割は単なる流通の場に留まらず、鮮度管理や品質保証といった面でも重要です。 市場の流通は多段階のプロセスを経るため、生産者の売値が安くなる一方、中間コストがかかり最終的に消費者が高く買わなければならないとの批判もあります。 しかし、流通の効率性やリスク管理の面では、市場流通が最も適している場合も多いという考え方もあります。
しかし、近年は水産物の卸売市場の経由率が低下しています。 1980年には80%以上だったものが、最近では50%を下回るそうです。 これは、鮮魚の流通が縮小し、スーパーやショッピングモールが台頭したためです。 さらには鮮魚店も1980年代には5万店以上あったものの、現在では1万店を切っているそうです。
そんな鮮魚店は、毎日早朝に地元の消費地市場で魚を仕入れ、消費者に魚の知識を伝えながら需要を喚起する役割も担ってきました。 しかし、大型スーパーでは売れ残りリスクを避けるため、冷凍品や加工品が中心となり、新鮮な魚の流通が減少。 この結果、家計における魚の消費は大きく減少し、鮮魚店も卸売業者も廃業が増加しています。
鮮魚店の減少とともに、家庭での魚介類の消費が減少。 1980年代前半には、家庭内での魚介類の消費は肉類や野菜を上回っていたようですが、現在では大きく減少…。 鮮魚店が街から消え、家計における《魚の消費》は大きく減り、食品市場は輸入食品が氾濫して過剰供給状態の現在、漁業者だけでなく、卸売業者・鮮魚店の廃業も加速しているそうです。
インバウンドで日本食ブームが広がっているものの、鮮魚流通含め日本のお魚事情はどうなっていくのかとても不安ですね…せめてもの対応として、皆さんもお魚をいっぱい食べましょう。
______________________ 経営コンサルタント 渡邉拓久
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